団地の敷地内に自治会の建物を建てる場合の手続き等は?(2011年9月号掲載)

私は団地管理組合の理事長をしています。私達の団地では居住者の親睦を図るために「自治会」が存在しています。今回自治会の会長さんから、団地の敷地内に建物を建てさせて欲しいと言われました。建物は会議に使用したり、お祭りの道具や防災用具も保管する予定だそうです。自治会でこのような建物を建てる場合は市から補助金がもらえるようです。組合員の多くも自治会のメンバーですし、私としては建てさせてあげたいと思っていますが、管理組合の財産である敷地を別の組織である自治会に使わせることは問題はないですか。また、その場合の手続はどのようにしたら良いですか。

管理組合と自治会は別組織ですから、本件で敷地に自治会の建物を建てさせることは管理組合の共用部分である敷地を第三者に貸すことになります。他方で、管理組合は建物や敷地、附属施設の管理を目的とする団体ですから、この目的に含まれない行為をすることはできません。では、敷地の第三者への賃貸は管理組合の目的に含まれるのでしょうか。

結論から言えば管理組合の目的に含まれると考えられます。

本件の場合は団地管理組合と自治会は別組織とはいえ、構成メンバーの多くが重なり合いますし、居住者間のコミュニティの形成は管理組合の目的の一つであり、自治会への一定の配慮もコミュニティの形成に資するといえます。

では、自治会へ共用部分の使用を認めるためにはどのような手続が必要でしょうか。

共用部分の管理行為(広義の管理行為)は(1)変更行為(2)狭義の管理行為(3)保存行為の3つに分類されます(本件が保存行為でないことは明かです)(1)の変更行為については区分所有法17条1項で特別決議(区分所有者数及び議決権の4分の3以上)が必要となります。(2)については区分所有法18条1項で普通決議で足ります。変更行為とは共用部分(本件では敷地)の形状又は効用の著しい変更を伴うものを意味するところ、本件では団地内の敷地の一部に建物(自治会館)を建設するものですから、通常は形状又は効用の著しい変更にはあたらないので、狭義の管理行為として集会における普通決議で可決すれば建設が可能です。

但し、その場合契約内容や使用期間を明示して、書面化しておくべきであると考えます。本件は貸主が管理組合、借主が自治会になります。

賃料(地代)のような対価を取るのか、無償(タダ)で貸すのかどちらも可能です。他方で、使用期間については明確に規定しておくべきでしょう。

この点、自治会が使用を希望する限りは永久に使用できるような規定は、共用部分である敷地の利用権を事実上失うことになりもはや管理行為とは評価できないので不適当です。

使用期間はある程度限定した上で、管理組合の必要に応じて、期間の満了が近づいたら再度総会において普通決議で、期間を延長(更新)するという形態をとることをお勧めします。

回答者:法律相談会 専門相談員
弁護士・石川貴康
(2011年9月号掲載)