店舗部分だけ管理費等を値上げするのは不公平か?(2009年7月号掲載)

私達のマンションは1階と2階が店舗で3階から10階までが住居となっています。今まで管理費と修繕積立金の金額は店舗も住居も同額でしたが、今度の総会で店舗部分の管理費と修繕積立金だけ値上げをすることを考えています。店舗部分の所有者から「不公平だ」とのクレームが出ています。どのように考えたら良いのでしょうか。

 

区分所有法は19条で「各共有者は、規約に別段の定めがない限りその持分に応じて、共用部分の負担に任じ、共用部分から生ずる利益を取得する」と規定しています。「管理費や修繕積立金(以下管理費等」と言います)がここでいう「共用部分の負担」に該当します。その負担は「持分に応じる」のですから、持分(専有部分の床面積の割合)が同じであれば、それが「店舗」であろうと「住居」であろうと、管理等の負担は同じであるのが建前と考えられます。

他方で、「規約に別段の定めがない限り」と規定していますから、規約で定めれば、持分に応じない負担割合を定めることは可能です。  では、規約で定めればどのような割合にしても許されるのでしょうか?例えば、住居部分は月額1万円のところ、店舗部分は5万円とすることは認められるのでしょうか?

 区分所有法は30条3項で「規約は、専有部分若しくは共用部分若しくは附属施設につき、これらの形状、面積、位置関係、使用目的及び利用状況並びに区分所有者が支払った対価その他の事情を考慮して、区分所有者間の利害の衡平が図れるように定めなければならない」と規定しています。そしてこの規定に違反した規約は無効と考えられています。

ここで、注意すべきは「~の事情を考慮して」「利害の衡平」を図るとされていることから、単純な形式的な平等を意味しているわけではないということです。「使用目的」や「利用状況」を考慮して定めると言うことは、むしろ、利用状況が異なれば店舗部分と住居部分で、管理費等に差異を設けることは「衡平」に合致するとも考えられるからです。

一般的には、共用部分の使用頻度は住居部分より、店舗部分の方が大きいと考えられますので、管理費等の金額を住居部分より店舗部分の方を多くすることは認められると考えられます。ただし、その差異は当然合理的でなければなりません。そのように考えると住居部分の5倍もの金額は区分所有法30条3項に違反すると考えられます。
では、それが何倍であれば合理的なものとして許されるのでしょうか?

実際の裁判例では約2・5倍の差異を無効とした例もありますが、結局はケースバイケースで判断するしかないと思いますが、個人的には2倍を超えるような差異は合理的な説明が難しいと思います。

回答者:法律相談会 専門相談員 弁護士・石川貴康
(2009年7月号掲載)