住戸内のコンクリートのひび割れ補修は居住者負担?(2017年8月号掲載)

 入居後間もなく、住戸内の天井にひび割れが入り、売り主の3年目アフターサービスで天井のビニルクロスを張り替えてもらいました。その後3.11の地震などで再びひび割れが発生し、以前より長く広くなった感じがします。現在、第1回目の大規模修繕工事が始まり、外壁などのひび割れの補修をしていますので、管理組合に室内のひび割れも直して欲しいと要望を出しましたが、専有部分なので対象外である。補修を希望するのであれば、個人負担で大規模修繕をしている施工会社に申し出てくださいと回答がありました。ひび割れているのは天井のコンクリートです。専有部分ではなく共用部分ではないでしょうか?よって、管理組合負担の工事ではないでしょうか?

 マンションの鉄筋コンクリートの壁や床・柱・梁は共用部分です。その共用部分が専有部側にも面し、天井などコンクリートに直にビニルクロス仕上げをしていると、コンクリートのひび割れに伴いビニルクロスにも亀裂が生じます。尚、亀裂が発生した天井や壁をこぶしで叩いてコンコンと響きのある音がする場合はコンクリートのひび割れではなく下地ボード(専有部)の継ぎ目に隙間やズレが生じたものです。

 共用部のひび割れやそれが原因で入った専有部のビニルクロスの亀裂の修繕は、管理組合(修繕積立金)が負担する修繕ではあります。しかし、コンクリートは乾燥収縮・熱膨張などでひび割れはつきものです。ひび割れが発生するたびに管理組合で対応するのは煩雑で大きな負担になります。

 私共がいつも提言しているアドバイスは、構造上・耐久上問題のあるコンクリートのひび割れは管理組合負担で行い、そうで無いものは専有者が壁紙張り替えの際自己負担で内装業者にパテ処理で対応してもらうようにしてもらっています。

 構造上・耐久上問題のあるコンクリートのひび割れとは、「日本建築学会・著 鉄筋コンクリート造建築物の収縮ひび割れ制御設計・施工指針(案)・同解説」による”一般環境下において劣化抵抗性を確保するための許容ひび割れ幅は屋内では0.5mmとする。”を基準としています。よって0.5㎜を超えるコンクリートのひび割れは管理組合の負担で補修し、またその際のビニルクロスの補修は亀裂の入った面のみを管理組合が負担としています。尚、このひび割れの補修方法はエポキシ樹脂(接着材)をひび割れに注入して補修します。

回答者:NPO日住協協力技術者 一級建築士 山田 俊二

(集合住宅管理新聞「アメニティ」2017年8月号掲載)