100年マンションを目指し給排水設備大規模改修:2014年2月号掲載

◆マンション概要

 O住宅は千葉県柏市郊外に建つ、住宅都市整備公団(現UR都市機構)分譲の8棟230戸からなる団地型マンションである。1978年に初年度入居が開始され、築36年を経過する。

 これまでに2回の外壁を中心とする大規模修繕工事、屋上防水改修工事、給水管更生工事等の大型修繕を実施している。

 管理組合では早い時期から長期修繕計画を整備して、「100年住まい続けられるマンション」という基本理念のもと、将来的な収支見通しを十分に検討しながら建物や設備の維持管理に取り組んでいる。

◆工事のきっかけ

 給水管からの著しい漏水事故は少ない状況にあったが、更生工事を実施してから18年を経過することや、近年、住戸内の給湯管、浴室・洗面・洗濯系統雑排水管からの漏水事故の発生頻度が高まる傾向が見られた。給排水管の劣化診断の結果からも、現状のまま長期にわたり対策を怠ると、更なる漏水事故が拡大することが予測された。

 長期修繕計画で設定されている工事の実行状況と資金的な収支見通しを検証した上で、給排水設備の改修に着手することとなった。

 なお、管理組合が保全する領域は共用の設備や配管類であるものの、将来にわたり水漏れ事故等の不安を解消し、安全かつ安心して住まい続けていくためには、やはり住戸内の設備配管の対策が不可欠との認識から、住戸内まで含めて工事の対象にすることとした。

管理組合立会いによる共用部検査

◆工事内容の検討

 基本的に配管類は新品に取り替える「更新工事」を主体として計画の検討を進めた。また、給水システムも受水槽を用いる方式から、増圧直結方式への変更を行うこととした。このことは結果として、年間に要する維持管理費用の節減に大きく寄与することとなる。

 計画段階で最も苦心したのは、住戸内の配管更新計画の検討であった。住まいとしての美装性を考慮し、基本的には隠ぺい配管としつつも、費用的な合理性の観点から一部を露出配管とする計画を検討した。

◆見積もり依頼と工事内容およびモデル工事

 見積もり依頼に際しては、配管材種、工事手法、要求性能等を記載した基本計画書と基本計画図を提示し、工事内容や施工の合理化、工事中の生活障害の軽減、工事費用の低減等を踏まえた技術提案を求める方式で行った。複数社から提案と見積もりの提示を受け、その内容に対するヒアリングや価格折衝等を経て施工会社が選定された。

 最終的には、屋外埋設給水管および建物内1階床下共用給水横主管は高性能ポリエチレン管、建物内共用給水縦主管はステンレス鋼管、住戸内給水管および給湯管はポリブテン管、雑排水主管・横枝管は耐火性ポリ塩化ビニル管での施工となった。なお、住戸内の配管は天井内、ならびに配管を隠ぺいするために造作したフカシ壁内に納めることで、化粧カバーによる露出配管部分は、玄関、廊下、浴室等のごく一部に限定された。

 また、着工に先立ち、代表的な間取りの2住戸の協力により住戸内のモデル工事を実施し、施工計画内容を検証して是正や改善を図った。また、モデル工事の住戸を公開し、居住者が工事後の実際の状況を直接確認することができる機会が設けられた。

◆工事の実施

 工事期間は平成25年8月~12月の約5ヶ月間。前半の8月~9月にかけて共用部関連、10月~12月が住戸内関連の工事。ちなみに住戸内の工事は、1住戸あたり最短で5日間を要し、住戸内の雑排水主管更新のため、1階~5階までの同一系統の住戸が同一期間で在宅することが必須であった。工事中は洗濯機と洗面台を取り外した状況となり、作業に伴う騒音や振動が発生する以外にも、日常生活面ではたいへんな制約が生じた。

 しかしながら、最後には230戸全ての住戸で工事を完成することができた。今回の工事の成功は、理事会と修繕委員会が施工者や設計者に任せ切りにせず、積極的かつ工事側と協力して居住者対応に当たられたことにあると思う。また、専門知識を持つ委員の方の有用なアドバイスも大きく寄与した。そして何より、居住者全員の理解と協力の賜物である。

O住宅

 

「設計・監理=株式会社スペース・ユニオン、施工=建装工業株式会社」

(2014年2月号掲載)