試験施工を何度も行い仕様書をまとた3回目の大規模修繕工事:2013年2月号掲載

(1)T団地の概要

 1972年(昭和47年)5月に入居が始まって、築40年目にあたるコンクリートPC壁式構造の5階建て27棟と管理棟からなる680戸の規模を持つ分譲街区で、当初から自主管理を行ってきています。最寄り駅「東葉高速鉄道・八千代緑が丘駅」より徒歩20分のところに位置しています。

 これまでの主な修繕は第1回の大規模修繕工事を1983年に行い、屋上断熱を目的とした屋上防水改修工事を1987年に行いました。その後1997年に第2回大規模修繕工事を行いましたが、手持ち資金では工事費の不足が分かっていたので借り入れを行い資金の準備をしました。その後、修繕費積立金の増額を総会で承認を受け、その後に起こる修繕工事に対応していくことになりました。従いまして、2012年の第3回大規模修繕工事費は手持ち資金で進めることができました。今回の大規模修繕工事は理事会の中に一級建築士が2人いることで特別な委員会等は設けず、理事会の議題の中で適宜報告、検討と決定を行うことで進めてきました。

(2)工事の概要

 前回大規模修繕工事から15年経過している建物で、東日本大震災では震度5強に遭って被害はありませんでしたが、経年による劣化は散見され、PCコンクリート版やコンクリート基礎巾木の爆裂、壁面の汚れ、タイルの剥落、鉄部の発錆などに対処することと、現在の建築様式に改新できる部分は工事種目に入れることにしました。

 施工会社決定後、2012年4月下旬に近隣小学校体育館で工事説明会を行い、5月中旬に着工し12月下旬までの7カ月で計画通りに竣工いたしました。

ベランダ物干金物取付け

(1)施工会社の選定経緯

 今回の工事にあたり3年前から仕様書の検討及び試験施工を行い2011年に仕様書をまとめ、業者選定、業者見積を行い、工事実績・会社の信頼性・コストの対応性の3点より業者を決定しました。まず事務局で10社を選び、それぞれの項目を比較対照し、その中から選定した6社に見積依頼をかけたところ5社が提出してきました。そこから3社に絞り込み各社の工事計画概要及びコストへの対応性について聴聞会を開き質疑応答を行い、前述3点より総合的に判断して業者の決定を行い、2012年2月末の総会に諮り計画通り決議されました。

(2)工事範囲

工事範囲と重点実施項目は表のとおりです。

(3)今回工事の主な特徴

 第1点は、品質問題は立地、環境、建設年代や構造方式などの固有な条件により簡単に解決できるものは少なく、着工3年前から仕様書の検討、試験施工を繰り返しながら仕様書をまとめたこと。第2点は、工事監理は施工会社と一体となって仕様書に記載の品質を実現できるように、着工前は定例会議を月1~2回程度、着工後は月2回行い、中間検査、完了検査などに立ち会ったこと。第3点は、施工会社だけでなく居住者側からの目線で安全面、品質面の監理を行ったこと。また、工事の進捗は毎月の理事会で報告し承認を得てきたことがあげられます。

(4)今後の修繕計画

 次回第4回大規模修繕工事は15年先(2027年)を予定していますが、建物として要求される耐震基準等法令による機能・性能や住まい方の変化により建替えるべきかどうか、難しい時期に入ってきました。建替えに関する法律等の環境がどのように整えられるのか、また、経済状態が今後どのように推移するかが問題と考えています。当団地は働き盛りの時に購入し、今は退職された方が多いのです。そういう方々が建替えに賛成するような状況を実現できるように、関係方面に働きかけていき環境を整えることができればと考えています。(T団地管理組合法人 理事長 望月利男)

(施工=JS日本総合住生活株式会社)

(2013年2月号掲載)