20.憂欝な警鐘 Ⅱ

 先回は、不動産に関する学会の動向を報告した。その甲斐あってというわけではないが、どうも土地の相続登記が義務化される気配である。義務化が徹底されれば、所有者不明土地の予防策が出来上がってくる。さらに、打開策として、土地所有権の放棄による帰属先に国家が据えられれば円滑化が進展するだろう。

 さて問題はマンションである。当シリーズの前任者である松本恭治教授は、地方都市の放置マンションが5割を上回っている現状を続々と報告し、それが例外なく首都圏に迫り、タワマンの人気に支えられた東京、横浜のベイエリアでさえ暗澹とはしていられない状況だと説いた。

 こういった流れの中で、今後マンションが抱えざるを得ない課題のひとつとして、居室の相続問題に着目したのは、かのユニーク管理を展開し話題を提供し続けた大正住宅団地(横浜市)の小澤忠二(88)元理事長と、宅建士でマンション管理士の駒井登(68)氏である。

 

マンションの相続問題を議論する小澤氏(右)と駒井マンション管理士(左)

 

 マンションにおいて、二つの老いが進行すれば、住居内事故による入院・転居、独居老人宅での孤独死、賃貸住戸経営の行き詰まりによる投資型企業の倒産など、様々な場面で居室の相続問題が登場する傾向を踏まえ、相続登記の徹底を呼び掛けたのが4年前だ。

 特に問題として浮上してきたのは、独居の居住者が亡くなり、相続人が漸く見当たったものの、「相続放棄」という事態に陥ると、相続登記の徹底といった啓蒙活動を超えて、管理組合に対して直接の費用負担が圧し掛かってくるという事態を招く恐れがある。

 所有者不明土地と違って、区分所有建物の場合、民法255条は「共有者の一人が、その持分を放棄したとき、又は死亡して相続人がいないときは、その持分は、他の共有者に帰属する」(区分所有法は規定を持たない)とする。

 区分所有者の団体側からすれば、具体的な対象はむしろ、問題住戸の相続面ではなく円滑な管理費等の徴収、維持管理面の継続等が課題として浮上するだろうと思われるが、相続放棄といった場面では、「不在者財産管理人」の選任が求められ、裁判所に対し申立てを行う可能性が生じてくる。

 この場合、不在者に関する必要書類、申し立てた側の必要書類等の準備のために、司法書士等の資格者による業務が必要不可欠だから、当然のことながら費用負担が発生してくるという訳だ。

 最初の話に戻すと、相続登記の徹底が、どれだけ効を奏すかという点では、土地と違って具体化が難しい。まして、新入居者が外国人が多数だとなれば、区分所有者の団体が把握できる範囲を超える。あくまでも啓蒙活動として呼び掛けるしかないか。予防策すら困難である。

 では、ウルトラCともいえるような打開策はあるか。放置住戸の収用という考え方も取り沙汰されるだろうが、フランスと違いわが国は、その規模が余りにも多いと予測される。

 予防策と打開策が霧の中だというのに、法律の壁も多い。とてもとても一本の法律で解決策を探ろうにも、答えが見当たらない。現行法による解決の糸口を探れば、隔靴掻痒(かっかそうよう)だということだろうか。悩みは深まるばかりだが、深刻な警鐘は今も鳴りやまない。(つづく)

 

明治学院大学法学部兼任講師・本紙客員編集委員
竹田 智志
2019年11月号掲載

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