マンション再生ーその6

「マンションの増築」

 高経年マンション、特に大都市郊外の団地型マンションの中には、3DK・専有面積50m2前後の間取りの、現在の住宅規模水準からみると小規模のものが多くある。これらは新婚世帯や子供の小さい時期、または子供が独立した高齢者世帯にとっては適当な広さであるが、子供が成長期の世帯にとっては狭さの問題が出てくる。若年新婚世帯、高齢者世帯のみが居住するといった偏った人口構成となると、良好なコミュニティが形成されにくくなり、将来、役員のなり手不足や管理水準の低下といった問題がでる可能性もある。これらの問題は別として、ここでは過去に行われてきた増築事例を振り返ってみる。

■ 首都圏におけるマンション増築の事例

 既存マンションを増築し住戸面積を拡大しようとする運動は1980年代からである。1965~1970年代前半に旧住宅公団が分譲した中層階段室型(5階建て壁式構造等)で構成された郊外団地マンションで、分譲後10~15年を経過した時期であった。住戸タイプは当時公団の標準設計あった専有面積50m2前後、南面に3室を持つ3DKで、日当たりや風通しのよいプランである。しかし、入居後10数年を経た段階で子供が成長し、就寝分離が要求される家族では住戸面積が狭いという問題が出てきたことが、増築運動の始まりとなった。

● 増築の平面形と面積
居室の増築は南側バルコニ-部分の一部を撤去し、ここに接続する形で行われる。既存の建物部分と新たな増築部分とは構造上は別の建物とし、エキスパンションジョイントで連結されている。この事例では6畳の和室2室(約30m2)にバルコニ-が附帯した建物が増築され、増築後の床面積は約80m2に拡大している。接続部分の既存バルコニ-は屋内化し、中廊下・ユ-ティリティ等に使用されている。(平面図参照)

増築した住戸の平面図

バルコニー側に和室(6畳)を
増築した高洲2丁目(1989年)

● 工法・工期・工事費用:
既存建物の構造にあわせ、ラ-メン構造、壁式構造等で増築されるが、この事例ではプレキャストコンクリ-ト板による壁式PC工法が採用されている。1棟あたりの標準工事期間は、調査・準備工事から工事完了・使用開始まで約6カ月を要している。工事期間中の仮住居への引越しの必要がない「住まいながら」の工事である。
この団地では1987年から1990年にかけて棟ごとに増築が行われたが、工事費用は第1期で当時において約480万円、最終期では550万円を要している。 

● 乗り越えてきた様々な課題
 これらの増築を実現するには、いくつかのハ-ドルがあった。技術的には可能であっても一つは法規制(建蔽率・容積率、及び確認申請等)の問題であり、日照・プライバシ-上からも敷地に余裕があることが前提となり、また、増築のニ-ズがあること、居住者間の合意形成が可能でなければならない。更に、実施後の増築棟と非増築棟との問題も生じる。土地・建物登記の問題、今後の維持管理・修繕積立金の問題をどうするかであった。これらの課題への対応はそれぞれの管理組合により様々であったが、このハ-ドルをクリア-することにより、初めて実施が可能となったと考えられる。しかし、その後この「増築運動」は「団地建替え運動」に転換されたが、バブル崩壊とともに全て終焉している。増築を必要とした時期の家族構成と異なり、ライフスタイルの変化も大きく影響している。

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