111.ゴーストライター

 ♬だれが作ったの?

 

 小説にもいるように、作曲にもゴーストライターがいます。半世紀も前のことになりますが、知り合いのK氏は複数の有名作曲家のゴーストライターとして多くの曲を作りました。演歌もあり、ポップス調の曲、クラシックも作りました。新設校の校歌を作曲したこともあり、今も歌われているそうです。当時無名だったK氏に作曲の依頼は直接ありませんが、有名作曲家は思ったように曲を作れるとは限りません。しかし、その作曲家の名前は認知されていますから、彼が作曲したことになった曲は「さすが」とか、「いい曲だ」と評価されます。名目上、誰が作曲したかは、とても大事な要素で、ブランドとはそのようなものなのでしょう。曲のよさをこころで感じるのではなく、作曲家の名前で良し悪しを判断する。服飾デザイナー、映画監督、小説家など、その名前に対して受け手が納得する傾向は高いようです。

 

 ♬自分のこころで感じたい♪~

 

 レストランも似ており、本当においしいというのではなく、今どきはSNSでおいしいと多くの人が言っているから「それこそがおいしい」、と賛意や合意することが仲間入りするために必要といった感があります。K氏は、クラシックから演歌まで幅広く作曲できたのですが、普通の作曲家はジャンルが比較的狭いので、とても重宝がられたわけです。おもしろいのはK氏に依頼した作曲家複数が同じ場に集まった時、格下のK氏に対し、誰もがよそよそしく敬語まがいの言葉を発したそうです。それらの作曲家はほとんど天国。K氏がそのことをバラさないか、あの世でも気が気ではないでしょう。
 自己の感覚が劣化しないように、自分はどう思うかを大切にしたいですね。
(服部 伸一 エッセイスト・写真家)
集合住宅管理新聞アメニティ446号 (2019年11月号掲載)

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