超高層マンションの改修 外壁色彩を一新:2008年9月号掲載

Yマンション (埼玉県草加市)

【マンション概要】

 Yマンションは、住戸数352戸、店舗数11店舗、地上25階、地下1階の複合用途型・超高層マンションである。東武伊勢崎線谷塚駅前に建つこのマンションは、駅前のシンボル的建物となっており、マンションの居住者のみならず、駅前を含めた近隣からも注目される工事となった。

 今回の工事は、第1回目の外壁等総合改修工事で、新築後15年目に実施した。管理組合では何年も前から準備を進め、特にシンボルとしての外観色彩に対しては、管理組合で様々な意見を出し合い、慎重に検討を進めてきた。その結果、これまでの単色の外観に変化を持たせ、3色の異なる色彩で駅前に聳え立つ大きな壁面にリズム感を与え、さらには超高層マンションとしての垂直性を感じさせるモダンな色彩に一新した。

 これまでの外観色彩は、新築計画時に設定されたものであったが、今回は、配色計画から合意形成までを、理事長を中心とする管理組合執行部が行い、真に居住者の手による地域のシンボル造りが達成されたと言える。

【工事仮設足場の検討】

 工事の設計段階では、超高層マンションが抱える問題として、工事足場の検討に重点が置かれた。超高層マンションの改修における工事足場は、「吊りゴンドラ」が主流となっているが、吊りゴンドラの仮設方法だけでも多種多様な選択肢がある。

 当マンションは、建物の外周部がバルコニーになっており、足場を仮設して外部から行う作業は、「バルコニー見付の塗装」と「手摺パネルの塗装」が主となる。一方、バルコニー内の工事は、バルコニーの各戸境に設置される隔て板を一時取り外すことで、外部足場を使わずに作業をすることができる。これらのことを勘案すると、仮設足場からの作業は比較的軽度になることが想定され、計画当初は費用の低減を考慮し、外部に部分的な飛散防止養生を施した上で、「単体ゴンドラ」を吊る方針で検討が進められた。

 ただし、この方法は、風などの天候に影響を受けやすいことや、作業効率がわるいことなどの懸案点があった。そこで、工事品質の向上を目的に、施工会社の意見やノウハウを広い視野で取り入れることにし、施工会社選定時に足場仮設に伴う提案を受けることにした。この結果、最終的には建物中間階までを「枠組み足場」で仮設することにし、上層階は建物全面に飛散防止養生を施した上で、「単体ゴンドラ」を吊る方法に切り替えることになった。

 これらの変更に伴い足場仮設費用が約10%増加したが、工事品質の確保のみならず、周辺への飛散防止性の向上や、風雨に影響されにくい工程計画が立てられ、工事中に大きな問題が生じることなく、無事に工事を成功させる事ができた。

【おわりに】

 昨今では、駅前などを中心に都市の立体化が進み、タワー型マンションと言われる超高層マンションが増えてきた。しかし、超高層マンションの改修手法は、未だ開発途上にある。超高層マンションの改修工事における最も難しい点は仮設計画と言え、刷毛の一本でも落下事故があってはならないのは勿論のこと、駅前密集地における塗料などの飛散にも細心の注意を要する。その一方、過剰な仮設計画は、工事費用の増大化を招く。今回の工事では、管理組合執行部の皆さんとの検討から始まり、施工会社を迎え入れ、発注者・設計者・施工者の三者の視点から多くの議論をすることができ、工事の成功に至った。これらの成果は、今後の超高層マンションの改修手法として、一つのモデルとなるに違いない。

(㈱スペースユニオン 一級建築士 藤木亮介)

<アメニティ新聞312号 2008年9月掲載記事>