耐震補強と第三回目の大規模外壁修繕工事

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妙蓮寺ハウス

(神奈川県・港北区)

今月は、若い世代にも魅力ある住宅にするための改修工事を目指した、妙蓮寺ハウスの事例を、設計監理を担当した(株)スペース・ユニオン様にご紹介いただきます。


妙蓮寺ハウスは東急東横線妙蓮寺駅から徒歩7分の至便な場所にある。3階建てのA棟と9階建てB棟からなり、今年で入居33年目を迎える。総戸数196戸で、線路脇の住宅街に建つ比較的大きなマンションである。

これまで二回の外壁修繕工事を実施しており、今回の工事は第三回目にあたる。第一回目は工事会社の責任施工でおこなわれたが、第二回目に引き続いて今回も当事務所が設計監理を担当した。

今回の工事では、共用廊下やエントランス廻りの積極的な改善をおこなうとともに、平成7年の阪神淡路大震災以降、管理組合の中で高い関心が持たれていた耐震補強工事を実施している。

準備段階における環境改善工事の検討

工事の準備段階では、さまざまな環境改善・整備計画を検討した。一般に築30年を超える高経年マンションでは、居住者の高齢化が指摘される。

妙蓮寺ハウスにあっても同様で、準備段階で実施したアンケート調査では、マンションの高齢化対策の要望が多く出された。2棟ともエレベーターが付帯しているが、エレベーターホールと共用廊下に20cm程度の段差が設けられている。各戸の玄関も同様である。これに対して、準備段階では共用廊下床面の床上げや段差解消機器の設置などを検討した。共用廊下廻りの段差解消は車椅子の利用や高齢者に限らず、ベビーカーを使用する若いお母さん方からの要望も強かった。

その他、将来のメンテナンスの軽減を考慮し、バルコニー鋼製手すりのアルミ手すりへの全面交換なども計画を試みた。ただし、工法上の問題点とともに、近々必要となる給排水設備更新に対する資金計画を検討した結果、残念ながら共用廊下のバリアフリー化とバルコニー手すりの交換は見合わされた。

しかし、30数年にわたり積み重ねてきた環境を維持し、さらに高齢者のみならず若い世代にも魅力のあるものに整備するという観点から、エントランスサッシをステンレス製オートドアに交換するとともに、床タイルの張替えをおこない、防犯機能、ならびに意匠的な向上を図った。さらに、住戸名札をはじめとする各種金物類は積極的に交換・整備し、共用廊下やエレベーターホールなどの床は最近の新築マンションの多くに採用されている長尺塩ビシートによる改装を実施した。

Koji28_2 エントランスのオートドア

1階独立柱廻りの耐震補強工事計画

妙蓮寺ハウスは、A棟・B棟とも1階部分の一部がピロティ形式となっている。阪神淡路大震災では昭和46年以前のピロティ形式のマンションに多くの被害が生じたことから、妙蓮寺ハウスでも耐震補強に対する関心が高まった。

平成10年に横浜市による簡易耐震診断を実施し、二次診断を必要とする報告が出された。ただし、二次診断だけでも一千数百万円を要するとする勧告から、診断・補強の実施は見送られてきた。

Koji28_1 新たに構成した耐震補強壁

今回の外壁修繕工事の準備を進める中で、居住者の中から耐震補強工事の実施に向けた強い要望が出されたことを受け、管理組合が主体となり耐震補強に関する勉強会やアンケートなどをおこない、居住者間の意見調整が図られた。その上で、当事務所が世田谷のマンションで実施した耐震補強工事の経験を生かし、外壁修繕工事の施工会社選定にあわせて、耐震補強方法の提案を受け、施工会社と協議して補強工事を実施することとなった。

ちなみに、横浜市から勧告のあった二次診断費用一千数百万円に比較して、当事務所の耐震補強コンサルタント報酬は工事監理を含めて60万円である。

耐震補強・外壁修繕工事の実施

書類審査、見積もり合せ、ヒヤリングなどを経て、(株)新井組を施工会社として決定した。

平成14年11月から12月にかけて1階独立柱廻りの耐震補強工事を実施し、翌平成15年1月から外部足場を架設して外壁修繕工事に取り掛かった。

耐震補強工事は、A棟・B棟とも独立柱の安定と上階の壁量との構造上のバランスを図ることに主眼を置いて、耐震壁を新設した。激震時の大破を避け、人命の損傷を防止することを目的としている。

外壁関係の修繕工事では、多くの点で前回の工事成果を確認することができた。12年前に実施した第二回目の工事時には共用廊下やバルコニーの天井に錆びた鉄筋が相当量発見され、ひびわれなども各所に認められた。それに対して、今回の工事では建物躯体の不良箇所は前回に比較して圧倒的に少なく、築30年を越えるマンションとしては非常に良好な状態であった。一方、前回の工事で施した下地材の付着状態が好ましくなく、天井面の仕上塗材を大幅に除去する必要が生じたことなど、一部には反省すべき点も見つかった。大規模修繕工事の設計監理にも継続性が重要であることを改めて確認した。

外壁色は白を基調に大庇と共用廊下の手すり壁に落ち着いた茶色のアクセントを付けて当事務所の提案にしたがったが、バルコニー手すりに取り付けられている目隠しテントは居住者の意見を反映させて明るめのモスグリーンのテントに交換した。

天井材の除去や工事終盤の天候不順に悩まされたが、(株)新井組の努力もあり7月下旬に竣工の運びとなった。専門委員会の継続した活動、歴代の役員さんの努力と成果により、高経年マンションのモデルとなるような大規模修繕工事になったと考える。

なお、管理組合では入居30年の歴史を記した詳細な記念誌“年輪”を刊行し、工事の竣工式に全居住者、ならびに関係者に配布した。

((株)スペースユニオン 奥沢健一)

<アメニティ新聞252号 2003年9月掲載>